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根本 匠ねもと
たくみ

衆議院議員

福島第2区

(郡山市・二本松市・本宮市・大玉村)

特別編集
厚生労働大臣
344日間の軌跡
厚生労働省改革に挑む
官房機能の強化

 日々の仕事をこなしていく中で根本は、国民の生活に最も密接な厚生労働行政を進めていく上で、厚生労働省改革は必要不可欠である、との思いを強くしていった。最も重要だと感じたのが官房機能の強化である。厚生労働省の業務は極めて多岐にわたる。それに応じて多数の部局に分かれているが、それぞれの部局が厚生労働行政を俯瞰しているわけではない。大臣専任のスタッフは2名の秘書官のみ。根本は、大臣と同じ目線、視点で施策や想定問答のチェックができる大臣直属のスタッフ体制を強化した。「統計問題は、この体制がなければ乗り越えられなかったかもしれない」と根本は述懐する。さらに、この体制を正式なものとして構築するため、令和元年夏の人事に合わせて「大臣官房総括調整室」を新設、室長は大臣官房総括審議官が務め、室長代理として実力のある課長クラス2名を配置した。

組織定員問題で直談判

 厚生労働省の「人手不足」は、許容範囲をはるかに超えていると根本は感じていた。歴代の大臣経験者にも話を聞いた。大臣経験者は「厚生労働省は業務量に対し人手が足りない」と口をそろえていった。何とかしなければいけない。この改革を進める上で、時が味方をする。根本が厚生労働大臣であった平成31年度(令和元年度)は、内閣総理大臣が示す人件費予算の配分方針について5年に一度の改定年に当たっていたのだ。根本は省内をまとめ、完璧な理論武装をした上で、自ら行政改革・国家公務員制度担当の宮腰光寛大臣に直談判した。霞ヶ関の常識は異例中の異例のことである。だが、これが功を奏し、令和2年度の組織・定員要求の査定で、厚生労働省の本省内部部局の定員は、前年から倍増となったのである。

厚生省改革に若手の声を聴いてみたい!

 平成31年4月、根本は省内に「厚生労働省改革若手チーム」を発足。自由な発想と現場に根ざした感覚を持つ20代・30代の若手職員38名に改革の具体的な検討を託した。
 4ヶ月後の令和元年(2019年)8月、根本は同チームから緊急提言を受け取る。そこには、組織の実態を赤裸々に綴ったセンセーショナルな内容も含まれていたが、根本は「このまま公表し、世に問うべきだ。ここをスタートラインとして、厚生労働省改革を進めよう」とすべてを受け入れ、「実行できるものは直ちに実行せよ」と事務方に指示を出した。その一つが、劣悪なオフィス環境の改善である。ある職員が自身のデスク周辺の室温を測ったところ「32.8℃」だったという。これでは仕事にならない。直ちに状況の改善が図られ、根本の退任前日の記者会見で冷房運転の柔軟化が発表された。
 なお、「厚生労働省改革若手チーム」はメンバーが変わった現在でも、省内で積極的な改革と発信を続けている。

挑戦者よ、来たれ!

 毎年夏、国家公務員の総合職合格者の官庁訪問がある。厚生労働省は業務の忙しさから、学生の間で「強制労働省」や「拘牢省」などと揶揄されたこともある。しかも、この年は統計問題で多くの批判を浴びていた。「厚生労働省の門を叩く若者が少なくなるのでは」と危惧した根本は、令和元年(2019年)6月21日、閣議後の会見で「挑戦者よ、来たれ!」という大臣メッセージを発信。学生たちに直接、厚労省への入省を呼びかけた。その結果、厚労省への内定者数は過去最高の36名となり、女性比率も4割を超えることとなった。
 さらに根本は、厚生労働省で働く子育て中の女性職員と懇談する機会を設けた。その中で女性職員から様々な意見が出たが、共通していたのは「やりがい」と「定時で帰れるような働きやすさ」の両立だった。厚生労働省は、女性にとっても、男性にとっても、「やりがい」と「働きやすさ」を両立できる職場でなければならない。根本はその決意を新たにするのだった。

浸透する「匠方式」1
匠方式の象徴「論点ペーパー」
根本は、重要な政策テーマについては必ず「論点ペーパー」の作成を支持した。

 厚生労働省でも、事務方から大臣への説明にはプレゼンテーションソフト「PowerPoint(パワーポイント)」で作成した資料が用いられる。しかし、写真やグラフを取り込んだ見栄えのするパワーポイントの資料は一見分かったような気にさせるが、論理の流れが説明されていないのだ。実際に国会審議の場で答弁する際にパワーポイントの資料を見ながら説明しようとすると、想像以上に難しい。
 そこで根本は、重要な政策テーマについては必ず、文書作成ソフト「Word(ワード)」による「論点ペーパー」の作成を指示した。「論点ペーパー」には、その政策テーマに関する基本的な考え方、論点、予算事業の概要、根拠条文、海外の事例・傾向など、そのテーマに関わる情報を網羅させた。新たな論点が生じれば、その都度加筆して論点ペーパーを改訂していく。見栄えはしないが、国会論戦の場面でもそのまま使えるように工夫された極めて実践的な資料で、根本は法案審議の最終段階で答弁書の代わりに「論点ペーパー」だけを手に野党議員との論戦に臨んだこともあった。「論点ペーパー」の精度が高くなると、こういうことも可能になるのである。
 厚生労働省内では「根本大臣といえば『論点ペーパー』」と今でも職員は話すそうだ。匠方式の象徴として浸透していたのである。