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根本 匠ねもと
たくみ

衆議院議員

福島第2区

(郡山市・二本松市・本宮市・大玉村)

特別編集
厚生労働大臣
344日間の軌跡
「最初の100日間」から獅子奮迅
匠フォース、再び

 厚生労働行政には、人生100年時代を見据えた社会保障改革や生涯現役時代の雇用改革など、経済財政諮問会議や未来投資会議など政府全体で議論しなければならない重要課題が山積している。  こうした課題に取り組むには、民間の視点で助言してくれるメンバーも加え、政策の企画立案や広報戦略などを補佐する体制を強化する必要がある。大臣直属のブレーンとして活動する人材を外部から積極的に登用することとし、5名の「政策参与」を任命した。第1次安倍内閣の総理大臣補佐官時代、第2次安倍内閣の復興大臣時代に活用した「タスクフォース」と呼ばれる戦略実行部隊(通称「匠フォース」)を駆使して対処していく手法、これを再び使い、難題に立ち向かう体制を整えたのである。
 大臣就任直後、根本の自宅には業務用ファックスが設置された。「国会答弁などの資料を受信するために」と厚生労働省が手配したのである。そのファックスは、委員会審議のある日は午前4時頃から受信を始め、多い時には1日に100枚もの紙が出力された。根本はその資料に目を通しつつ、通常は午前6時前後に、早い時には午前5時に厚労省に登庁。大臣室に着くや否や、テーマごとに担当者を呼び込み、夫人手づくりのおにぎりを頬張りながら内容を逐一確認。修正が必要なものについては答弁案の書き直しを具体的に指示していった。

現天皇・皇后両陛下をご案内

 大臣就任直後の週末、「第18回全国障害者芸術・文化祭おおいた大会」に出席するために大分市に出張。この大会で根本は主催者代表としてあいさつし、ご臨席された皇太子ご夫妻(現天皇・皇后両陛下)と昼食のお供をするとともに、メイン会場をご案内する役割を果たした。

世界を舞台にWHO選挙戦を陣頭指揮

 大分での障害者芸術・文化祭への出席から休むことなく、翌早朝、福岡から羽田に飛び、そのまま羽田から国際線でフィリピンに向けて旅立った。日本政府は、WHO(世界保健機関)の6つの地域事務局のひとつである西太平洋地域事務局の次期事務局長選挙に候補者を擁立しており、選挙会場で加盟国に最後のアピールをする大仕事であった。根本は、会場に到着するとすぐに各国代表と精力的に会談を行い、直接支持を働きかけた。政府主催のレセプションでは、根本の発案で、応援に駆け付けた公益財団法人結核予防会の方々が用意してくれただるまの目入れをセレモニーに取り入れ、テーブルに折り鶴を置き各国代表との話題づくりの「小道具」として活用した。日本らしさあふれる演出は各国代表にも大受けで、万雷の拍手を浴びた。選挙は激戦の末、政府が擁立した候補が勝利。新型コロナウイルス感染症に対応するWHOにおいて、我が国が大きく貢献する礎を築いた。

国の行政機関での障害者雇用問題解決を主導

 平成30年(2018年)8月、国の行政機関の多くで、障害者雇用者数を不適切に計上し、実際には障害者法定雇用率を満たしていないことが発覚した。根本が大臣に着任したのはその渦中だった。着任してすぐの10月22日、根本は副議長として関係閣僚会議を主導し、法定雇用率と障害者の活躍の場の拡大に政府一体となって取り組む基本方針を取りまとめた。  直後の臨時国会では、連日のように野党が政府を追及した。「障害者である職員の計上に意図的な水増しがあったのではないか。」こうした質問への答弁は、本来、不適切計上を行っていた各省庁の副大臣が行うべきものである。しかし、質問は障害者雇用制度の所管省庁である厚生労働大臣に集中した。厚生労働省は不適切計上を行っていない。それでも根本は、制度を所管する大臣として、これだけ大きな問題に対応する政府の責任者として、文字通り政府全体を背負い、答弁に立ち続けた。
 さらに翌年の通常国会に改正障害者雇用促進法案を提出、厚生労働大臣から国の行政機関に対する報告徴収の規定を設けるなど再発防止のための体制強化を盛り込んだ。こうした取組の結果、基本方針をまとめてから半年の間で国の行政機関に採用された障害者数は約3,400人、前年1.2%だった障害者雇用率は2.3%へと大幅に改善した。  この間、根本は、自身も2回にわたり厚生労働省で働く障害のある職員と懇談し、彼らの仕事に対する思いに直接耳を傾けた。「現場第一主義」は根本の政治家としての原点である。

40年ぶりの水道法大改正

 厚生労働大臣着任後、最初の国会(第197臨時国会)で大きな争点になったのが、前の国会から継続審議になっていた水道法の改正である。
 最大の焦点は、民間事業者に水道事業の運営を委ねる方式の是非。野党は「水道を民営化するものだ」と批判、マスコミも野党の主張を連日取り上げた。根本は厳しい野党の質問に対し粘り強く答弁した。質疑は13時間にも及んだが、12月5日に無事採決され、翌6日の衆議院本会議で可決・成立した。
 さらに、年末の次年度予算の協議にあたり、根本は、民主党政権下による事業仕分けで大幅に削減された水道の施設整備や耐震化のための予算を大幅に増額させることに成功。法律と予算の両面で、水道の基盤強化を実現した。

風しん対策で国民の不安を解消

 平成30年(2018年)の風しんの患者数は平成29年の約30倍。特に平成30年の年末にかけての増加のピッチはすさまじく、妊婦の方々を中心に不安が広がっていた。その時点で39歳から56歳の世代の男性は風しんの抗体を持っていない人が多く、こうした男性が予防接種を受け抗体を持てば、感染の広がりを抑えることが可能になる。厚生労働省では、平成31年度の予算案に風しんの抗体検査と予防接種の無償実施についての予算を盛り込むべく財務省との間で折衝を続けていた。根本は、不安の広がりに即時に対応することを決意、予算案の決定を待つことなく、平成30年12月11日に風しんに対する対策を公表した。官僚の発想では「予算案決定に合わせて公表」が通例だが、あえて“先出し”することで、国民の不安の解消につなげたのである。

「妊婦加算」凍結を決断

 それは、ツイッターに寄せられた投稿がきっかけだった。“普段と変わらない診察”を受けた女性が、妊婦だと告げると会計が高くなった、そのことへの不満を呟いたのだ。かかりつけ医が通常の診療よりも配慮が求められるため避ける傾向の多かった妊婦の診療を促すために平成30年度の診療報酬改定で新設された「妊婦加算」だが、ツイッターの投稿以降、メディアにも取り上げられ、その批判の輪は与党内にも広がっていった。
 制度を所管する厚生労働省の対応に注目が集まる中、平成30年(2018年)12月14日、根本は記者たちの前で妊婦加算を当面凍結する方針を表明、「妊婦の方が安心して子どもを産み、育てられる社会を築くために、安心な医療を納得して受けられる仕組みとなるよう、全力で取り組んでまいります」と宣言した。この大臣見解が示されたことで「妊婦加算」への批判は一段落し、「妊婦に対する診療の在り方」という本質的な議論が始まることとなったのである。

医学部定員問題に断を下す

 同じ日、文部科学省では、この年の夏に発覚した複数の大学医学部の不適切入試問題を受け調査結果の最終報告書を公表、追加合格を認めるとした。しかし、このことは文部科学省だけの問題に留まらなかった。医師の需給は厚生労働行政の重要事項であり、その観点から医学部定員は決められている。追加合格を認めるのであれば、この問題にまったく関わりのないこの年度の受験生の合格者数を減らさざるを得ない状況になるのだ。募集定員の変動は受験生の人生を大きく左右しかねない問題であり、既に受験生の間では動揺が広がり始めていた。
 「このままでは大きな問題になりかねない」と感じた根本は厚生労働大臣としての判断を示し、担当部局に文部科学省との再調整を指示。その結果、平成30年(2018年)12月25日の閣議後の記者会見において厚労大臣と文科大臣が共に「定員を超過した分は、2020年度以降に一定の期限を設けて需給調整を行うことで2019年度の受験生だけが不利益を被ることを避ける」と記者発表。根本の迅速な政治決断が、問題を未然に防いだのである。