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匠の考え

根本復興大臣の会見[平成26年8月29日]

1.発言要旨
 私から、2点申しあげます。
  第1点、平成27年度復興庁予算概算要求および平成27年度税制改正要望についてです。本日、平成27年度復興庁予算概算要求を財務省に対し、平成27年度税制改正要望を財務省と総務省に対して、提出することとしています。
  まず、概算要求については、去る7月25日に閣議了解された、平成27年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針を踏まえて公表した平成27年度復興庁予算に関する要求方針に基づき、各部署とこれまで調整を行ってきたところであります。復興庁所管分の概算要求の合計額は2兆5,838億円であり、その内訳は、住宅再建・復興まちづくりに1兆6,787億円、産業・なりわいの再生に1,439億円、被災者支援に1,446億円、原子力災害からの復興・再生に6,055億円となっています。
  要求のポイントとしては、次のとおりです。住宅再建・復興まちづくりについては、復興の進展を踏まえて必要な予算を確保すること。原子力災害からの復興・再生については、早期帰還支援や新生活支援など、福島の再生を加速すること。産業・なりわいの再生については、創造的な産業復興を加速するための取り組みを強化すること。被災者支援については、避難の長期化や災害公営住宅への移転の進捗に対応するため、健康・生活支援を強化すること。「新しい東北」の創造と経済再生の好循環を目指して、先進的な取り組みの加速と、被災地における横展開を推進すること。
  このように、この要求は住宅再建・復興まちづくりを引き続き加速するなど、復興を進める上でのさまざまな課題に対応するものであり、必要な予算を要求することとしています。特に、産業・なりわいの再生に関し、「新しい東北」へ向けた産業復興を図るため、私の下に設置した「産業復興の推進に関するタスクフォース」の成果として、次の3事業などを要求することとしています。被災地における先進的な取り組みの横展開や、震災復興に取り組む多様な主体間の連携を推進するため、被災地の事業者に対する資金面・ノウハウ面の支援などを支援する『「新しい東北」官民連携推進協議会運営事業』、水産加工業の販路回復のために流通の各段階への指導や、販路回復に必要な加工機器の整備などの支援を行う『復興水産加工業販路回復促進事業』、従前への復旧では事業継続、売り上げ回復などが困難な場合の、新分野進出などに対する支援措置を創設する『中小企業組合等共同施設等災害復旧事業』(いわゆるグループ補助金)の制度拡充。
  また、被災者支援に関し、避難の長期化や災害公営住宅への移転の進捗に対応するため、『被災者に対する健康・生活支援に関するタスクフォース』の成果として、次の2事業などを要求することとしています。相談員の確保を図りつつ、地域におけるコミュニティ活動の活性化と、それらの活用による相談支援や、孤立防止の見守りなどの被災者の日常生活の支援体制を構築する『地域コミュニティ活動を活用した被災者生活支援事業』。被災者支援の総合調整の機能や、被災者の生きがいづくり活動の支援などを行う『コミュニティ復興総合事業』の創設。
  次に、税制改正要望については、関係県との議論を踏まえ、福島の再生を加速するため、避難指示があった区域への帰還などを支援するもの、住宅関係で被災者を支援するものについて、要望することとしています。東日本大震災からの復旧・復興は、内閣の最重要課題の一つです。しっかりと予算の確保などを行い、東日本大震災からの復旧・復興、福島の再生の加速化を一層進めていきたいと思います。
  次に、福島県訪問についてです。31日、福島市を訪問して、飯舘村復興公営住宅飯野町団地竣工式に出席するとともに、葛尾村を訪問して、復興を進めている現場を視察する予定です。
  私からは以上です。

2.質疑応答
(問)今回の概算要求を拝見しますと、住宅再建・復興まちづくりなどの公共事業予算が3割近く増えていますけれども、一方で、決算を見ますと、工事の遅れなどから、使い切れていないという状況も見て取れまして、その使い切れていない中で公共事業予算を増やしても、なかなか復興が難しくなるのではないか、という懸念もあるんですけれども、この点は大臣どのようにお考えでしょうか。
(答)平成27年度概算要求については、復興事業の円滑な実施に配慮しながら、これまでの執行状況なども踏まえて、復興の加速に必要な額を計上したところで、速やかな執行に努めていきたいと思います。ここは十分に考えて、考慮して計上しております。今のご指摘の平成25年度決算、多額の未執行額が生じているという指摘、これは私は、頭をきちんと整理して、考える必要があると思います。一つは、復興交付金の性格です。復興交付金の性格というのは、国が先々の年度の事業費までを配分し、被災自治体が基金に積み立てて柔軟に執行できる仕組み。この仕組みが非常に特徴的なんですね。ですから、今年度の事業費まで国から市町村に執行する。ここの執行率は、24年度と25年度は、確かにここの執行率は落ちている。ただ、ここで大事なのは、現場で使い切れていないというような指摘がありましたが、この復興交付金の仕組みは、国から被災自治体に配分する国の執行、こういう視点と、もう一つは、被災自治体が施工業者などと契約して実施する、現場での執行、この2段階で執行できる仕組みになっていますから、ここの観点が、他の予算とは異なっている。その意味では、復興交付金とそれ以外の事業は、切り分けて考えることが必要だと私は思います。ここは、少し頭の整理が必要だと思います。まず、復興交付金の性格は、そういうことであります。国から自治体への予算の執行ということと、自治体が実際の現場で施工業者と契約して行う執行と、この二つに分けて考えなければならない。
  復興交付金については、その意味では、平成24年度については、国から被災自治体へ交付金を配分することに力を入れた、だから自治体の基金が積み上がりましたが、ここは現場でも執行が遅れていた。平成25年度は、自治体が基金を使って現場で事業を進めるということに力を注いだ。こうした具体的な加速化措置をどんどんやりましたが、現場での執行が大幅に前進して、被災自治体の契約分額は、24年度額に比べて、25年度末は3倍伸びている。つまり3000億円から9000億円に伸びた。そして、被災自治体の現場での執行と、事業の執行という観点での平成24年度から25年度にかけて、15%、つまり53%から68%に大きく伸びた。こういう、まず整理が必要だろうと思います。
  それから、復興交付金を除いた復興関連予算、これについては町の復旧・復興を中心に事業の進捗が見られた。執行率は67%。平成24年度の61.3%よりも、5.7ポイント大きく改善した。特に町の復旧・復興は17.9%改善した。さらに、これも大事だと思うんですが、決算ベースと実際の執行ベースと、どういう見方をするか。25年度の予算について、確実な執行が見込まれるものとして、繰り越したもののうち契約や交付決定が行われているもの、これを加えると、実際は82.3%の執行が見込まれているので、順調に予算が執行されていると思います。
そもそも、例えば災害復旧事業等は、気象などのやむを得ない事由で進捗が遅れることが想定されているので、あらかじめ制度的に繰り越しというのが認められているという事業ですから、実は復興事業も年度の途中で、事業が始まることになって、そこでポンと発注しますから、そうすると繰り越しというのが出てまいりますが、それは制度的に、そういう性格のものだという、この事業の性格というものを、私はきちんと考える必要があると思います。その意味で、不用額が0.7兆円、平成24年度の1.2兆円から大幅に減少しました。これについては、事業の実施、累次の加速化措置をやりましたから、事業の実施の見通しが立ってきたため、不用を出さずに、執行したり、繰り越しすることができるようになったということを示しています。
  ただ、大事なのは、住宅再建・復興まちづくりについては、私も単なる予算を作ればいいということではなくて、具体的に用地取得問題、あるいは執行段階で、さまざまな隘路が出てくるだろうと。それを制度的にいかに改革していくか、これがポイントだと思いました。その意味では、用地取得については、用地取得抜本改革をやりました。財産管理制度の、半年がかりと言われたのを3週間まで短縮できるようになった。これは現場でも聞いている。ここまで早くなりましたと聞いている。
収用法についても、七つの改革をやった。加速化措置を講じた。住宅再建・まちづくりについては、用地取得の抜本改革を含めて、90項目以上に係る改革措置をやった。ですから、例えば防災集団移転事業では、用地取得がこの改革措置によって一気に進んだ。大事なのは、私は、事業執行の面で、ステージがだんだん上がるたびに新たな問題・課題が出てくる。それについて、いかにそれを乗り越えるかと。だから、「住宅再建・復興まちづくりタスクフォース」を作って、私が陣頭指揮をとってそれぞれの制度を深掘りしろと、発破を掛けてやってきた。それはみんなが思いを一つにして、やっていただきました。復興を加速化するということは、私はそういうことだと思う。ですから、統計データをどうみるか、ここが一番大事だと思いますよ。それをいかに読み切るか。今のご質問でしたので、私はそういう部分が大事だと思います。今の、26年度以降、これまでの累次の加速化措置の効果が一層発現することによって、相当の進捗が図ると見込んでいますから、27年度についても、速やかな執行に進めていきたいと思います。そして、課題・問題が出てくれば、できない理由を探すのではなくて、いかにして課題を解決するか、そういう精神で臨んでいきたいと思います。

(問)大臣は、防潮堤について、住民の社会的合意形成が重要だと訴えられていますが、気仙沼の小泉地区の防潮堤については、NHKスペシャルで取り上げられたり、安倍昭恵 夫人も見直すべきだと言っている防潮堤なんですが、これについて、見直し派の住民は、住民合意は取れていない、一部の地域ボスが見せかけの住民合意を基に進めている、という指摘をしているんですが、もしこれが事実であれば問題だとお考えでしょうか。特に、小泉進次郎政務官が、一部の地域ボスの推進の要望書を受け取って、それを基にお墨付きを与えていると、推進しますと、いうことを言っているんですが、これは十分な社会的合意でなければ、問題ある行動だと思うんですが、この2点についてお伺いしたいんですけど。
(答)防潮堤の復旧については、まず基本的な考え方を申し上げますが、事業主体となる県などが、比較的発生頻度の高い、数十年から百数十年に一度の津波を想定しながら、環境保全・周辺計画との調和、あともう一つは、地元市町村のまちづくりとの整合性。防潮堤の高さを含めて、まちづくりと整合性が取れいないと、密接に絡んできますから、この整合性を、まちづくりなどとも整合性を図りながら、具体的な防潮堤の高さを含めて、柔軟に計画できることとなっております。
  そして、事業主体や所管省庁において、合意形成に努めている海岸については、海岸管理者などが、引き続き丁寧に地元の合意形成を図っていただくとともに、合意形成がなされた海岸については、速やかに復旧が進むよう、適切に対応されるものと思います。復興庁としても必要な支援をしてまいりたいと思います。

(問)見せかけの住民合意でも、宮城県で「これが住民合意だ」ということで、見せかけの一部の地域ボスの住民合意をもって、事業を進める場合でも、見直すお考えはないんでしょうか。
(答)今、私が申し上げたとおりであります。合意形成に努めるという考えについては、海岸管理者が引き続き地元に合意形成を図っていただく。丁寧に合意形成を図っていただく、というのが必要だろうと私は思います。

(問)柔軟に対応するということなんですが、見直し派住民は、工費が安くて、景観も破壊しない見直し案、代替案があるのに、それを宮城県は全く検討しないと。このままごり押ししようということで、今週の月曜日に陳情しているんですが、これでも国として、復興庁として、何らかの指導なり調査なり、するお考えはないんでしょうか。
(答)そういう話は、私は、地元で丁寧に話し合いながら合意形成を進める、ということだと思いますよ。だから、私が今、申し上げたとおりの考え方、ということに尽きると思います。

(問)中間貯蔵施設の関係なんですが、福島県が、候補地の地権者に地価の下落分を補填するという趣旨の給付金を検討している状況です。これはあくまで県の話ではありますが、これは見方によっては、市場価格で決められるべき地価を、行政がつり上げるということにもなって、不公平でもあるかなと思うんですが、大臣といいますか、国としてはどのようにお考えでしょうか。
(答)今、福島県において考えられている、福島県としてどう対応するかということを考えているなかでの考え方だと思います。これは、福島県が地域の振興あるいは生活再建という観点から、さまざまな工夫をして考えている案だと私は思います。

(問)基本的には、よろしいというか。
(答)やっぱり、その制度設計は、福島県が今、考えているということなので、そこはやはり、福島県の判断を尊重したほうが、一番現場に近い、県と市町村の間での協議でやられていますので、そこは現場の、基本的には、県の判断を尊重したいと思います。

(問)昨日、東北に新設される大学医学部が、東北医科薬科大に決定されました。その件についての大臣の所感を伺いたいと思います。
(答)昨日、東北地方における医学部設置に関する構想審査会において、東北医科薬科大学が選定されたこと、それは私も承知をしております。今後、正式に復興庁に協議があると思いますが、専門的な見地から適切な審査がなされて、基本方針を踏まえた選定が行われたものと考えています。この選定に対しては、東北各県、各大学などと運営協議会を立ち上げ、地域ニーズに応じた教育の実施や、卒業後の地域定着の充実に関する条件が付与されている、と聞いています。今後の震災からの復興、被災地の医療体制の充実に努めていただくよう期待をしています。

(問)中間貯蔵施設のお話に戻るんですけれども、福島県、今日にも受け入れ方針を決定する見通しですけれども、ここまで取り組まれてきた大臣としての受け止めをお伺いしたいと思います。
(答)中間貯蔵施設については、今月8日、私と石原環境大臣で、佐藤知事、渡辺大熊町長、伊澤双葉町長に対して、中間貯蔵施設の整備などに係る対応について、財政措置を含めて、国としての回答を示しました。そして、16日には福島県議会に復興庁、環境省の担当者が出席して、国としての対応策を説明する。26日には石原大臣を筆頭に、大熊・双葉の両町議会への説明をしている。また、翌27日に両町の行政区長会にも説明を行ってきました。
  そしてまた、今週25日には、福島県から両町に対して、県独自の支援措置が提示されたともお聞きしております。そして、なお昨日は、私が8日にお示しした国の回答の中で二つを約束していた、両町の復興に向けた基本的な考え、大熊、双葉、ふるさと復興構想、これを私の「根本イニシアティブ」として、両町長にお示しをしたところです。要は地元において、われわれ国と地元と、県や地元とのさまざまな要請、要望に応えて、国としてステップを踏んで対応してきておりますので、できるだけ早く次のステップに進めることができるように、引き続き県や両町とよく相談していきたいと思います。

以上