現場から国を動かし
東日本大震災からの
復興を加速!!
東日本大震災は、東北から関東にかけて広範囲に被害が及んだ「広域災害」であり、地震、津波、そして原発事故による直接の災害や、原発事故に起因する災害が重なる「複合災害」でもあった。特に、津波被害が甚大だった被災地にとって最大の課題は、住民の方々がもとの暮らしを取り戻すことで、再び津波被害に遭わないようにするためには、津波で被災した地域を嵩上げすると共に高台に移転する必要がある。震災の翌年、自民党が政権に復帰し最初の復興大臣を拝命した根本匠は、民主党政権時代の復興の遅れを取り戻すには、民主党政権下の関連施策を徹底的に見直し、助走を省いて、いきなりスタートダッシュをかけるしかない、と決意する。
根本は、早速、復興大臣の下に関係省庁の局長クラスで構成する「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」を設置。用地の確保など現場で生じる様々な課題に根本が陣頭指揮を執り、省庁の縦割りを乗り越え取り組んだ。
復興大臣が頻繁に現場に足を運び、復興を加速する上での課題を抽出。その場で解決し、即断即決できない案件があれば、国を動かして解決を急ぎ政策に反映させていく。根本の言う「現場主義」である。①柔軟な区域変更を可能にする事業計画変更の変更手続きの簡素化、②津波被災地で農地法の許可を得ずに農地を買い取れるようにする農地法の規制緩和、③財産管理制度の抜本改革等の加速化措置を矢継ぎ早に講じたことで、用地取得という民主党政権時代からの難題が一気に解決され、防災集団移転促進事業が急速に進む。
財産管理制度は、土地・建物の所有者や相続人が不明の場合、当事者に代わって財産の保全や売却を財産管理人に任せる制度。過去に国の直轄事業で採用された事例があるものの、1年以上の時間がかかっている。根本は、タスクフォースのメンバーである法務省の局長を動かし、最高裁判所に協力を要請。財産管理制度の解説に活用する「Q&A」の作成、震災関連対応の書記官を25名増員、震災対応窓口を設けるなど態勢を整備してくれた。また岩手県からは「財産管理人のなり手がいない」と言われたが、日弁連、司法書士会にお願いし、1年後には587人を用意してくれた。その結果半年以上かかっていた財産管理人の選任と土地売買を許可するかどうかの審理に関する手続きが、最短で3週間程度と劇的に短縮が図られる。裁判所がこれほどまでに踏み込んだ対応を示すのは異例のことで、永田町や霞が関からは驚きの声が上がった。
根本は、土地収用法制度の抜本改革、加速化にも取り組む。土地収用法は、憲法上の財産権に関わることから最後の手段として用いられる〝伝家の宝刀〟で、幅杭を打ってから3年か、任意買収で8割取得することが収用法適用の基本とされてきた。根本は、この「3年8割ルール」が、法律の規定ではなく、運用上のルールであることに着目し、「大半の土地は所有者不明土地なのだから、土地収用法を最初から適用すべきだ」と指示。「住宅再建・街づくりタスクフォース」を総動員し事業認定期間の短縮(3カ月→2カ月)、権利者調査の合理化、収用裁決手続きの迅速化等、「土地収用改革7本柱」を打ち出す。
施策を次々と打ち出し、実行したことで用地取得は格段に加速。高台移転事業の用地取得率は1年間で49%から89%へ、事業の着工率は復興大臣就任時の12%から退任時には95%へと一気に進む。
東日本大震災で顕在化した所有者不明土地問題は、被災地に限らない。不明土地が全国の土地の2割以上を占め、対応を求める声が強まる。根本は復興大臣時代の経験を生かし、所有者不明土地に取り組む自民党議員懇談会のメンバーとして活動。議員懇談会の求めに応じ、復興大臣時代に取り組んだ財産管理制度や土地収用制度の迅速化・加速化等、所有者不明土地の取得のための制度改革について分かりやすく解説する等、政府に対し法整備の必要性を説き、平成29(2017)年度の「骨太の方針」に所有者不明土地対策が初めて掲げられる。政府を挙げた本格的対応が待ったなしであることが、ようやく認識されたのである。
政府は、翌年度から毎年、所有者不明土地の利活用を可能とする法整備を進め、異例の速度で対応。一連の法整備により、土地収用手続の合理化や、所有者不明土地を利活用する地域福利増進事業の創設が実現する。土地基本法が30年ぶりに見直され、土地所有者の責務が明確にされた。地方公共団体に、不在者財産管理人等の選任申立てを広く認める制度も始まった。法務省は民法の見直しに着手し、所有者不明土地・建物に特化した新たな管理人制度や、相続した土地を手放して国に引き取ってもらう制度などを創設。
所有者不明土地立法の近年の整備は目を見張るものがある。東日本大震災での根本の奮闘の成果は着実に活かされている。