阿武隈川・平成の大改修
(二本松篇・輪中堤)
数年に一度、暴れ川となる阿武隈川が平成10(1998)年8月、記録的な豪雨が断続的に続いたことにより氾濫。二本松・安達地区は無堤防地区であったため、国道4号が冠水し一時通行止めになるなど甚大な浸水被害に見舞われる。無堤防が原因とはいえ、この地域は山々に挟まれた狭い場所に家屋が点在していて、従来の「連続堤方式」では家屋や田畑の多くを堤防用地にしなくてはならなくなり、また、完成までに多額の費用と期間が必要になってしまう。さらに悪いことに、平成13(2001)年に河川整備検討委員会が設立され、地域の方々と洪水対策について意見交換が開始された翌年7月に洪水が再発。早期の整備が求められることとなった。
そのとき、匠が動いた!
急きょ現地に向かい、その惨状をヘリコプターから目の当たりにした根本は、阿武隈川など関連河川の改修を急ぐ必要があると判断。対象区域を地形・氾濫形態・資産及び想定被害状況等から8ブロックに分割し、従来の「連続堤方式」の他、洪水から人命や財産・暮らしを優先的に守る「輪中堤方式」や「宅地嵩上げ方式」なども比較検討し、そのブロックのニーズに則したベストの方式で洪水対策を行うことにする。さらに、輪中堤の外側の氾濫を許容することとなる区域においては、新たな住宅が立地しないよう建築基準法の災害危険区域に指定。遂に平成28(2016)年10月末に総事業区間9.0kmに達する地域の河川整備が完成した。輪中堤は古来からの日本の知恵なのだ。