政党政治家、日本の金融改革を先導
政策立案に挑戦を受ける官僚たち
コンセンサスを重視しがちな日本の政界で、政府の政策に異を唱えることは極めて異例であるが、自民党の金融再生トータルプラン推進特別協議会の若手議員はそれを行おうとしている。
先頃、保岡興治、石原伸晃、根本匠氏等の若手議員は、金融再生トータルプランを起草した。いわゆるブリッジバンク構想であるが、これに成功すれば、金融制度改革と景気回復という橋本首相の公約が果たせることになる。
3氏は、この未曾有の危機にあって極めて重要な役割を担っており、これまでの日本の政治風土をくつがえし、政策を決めるのは官僚たちではなく、選挙で選ばれた政治家だということを示すことになる。
金融制度改革の主導権は、大蔵官僚ではなく自民党の政治家が握ることになった。保岡氏は元大蔵政務次官、協議会のメンバーの塩崎氏は元日銀の行員、根本氏は自民党の大蔵委員を務めている。
これまでの自民党の政治家は、大蔵委員会や日銀の主要メンバーとして国際金融市場で幅広い経験をしていない人が多い。農業や建設関係の研究会に参加する議員は200名いても、金融問題を研究した議員は30名程度しかない。しかも伝統的に官僚に頼っていたから政策立案の経験もあまりない。
特に、極めて重要な政策を立案する若手議員の能力というのはこれまで試されたことがない。政治家が政策の方向性を提示した場合でも詳細は官僚が作成してきた。日本の政治家は自前のスタッフが十分でなく、独自の情報は民間のアドバイザーに頼らざるを得ない状態だった。
自民党が銀行の不良債権問題に着手するのにこれほど時間がかかった理由の一つは、自民党の金融部会がこの問題を取り上げるたびに、官僚たちが最悪期は過ぎたと言ってきたからだ。そのため、銀行の不良債権の実態は、依然として完全に開示されたとは言えない状態である。また、官僚は政治家の足下を見ることに長けている。政策の立案を少数の政治家集団に委ねるのは、幾つかの利点がある。まづ、スピードであり、協議会は不良債権の処理にあたって無税償却を認める方針をわづか1ヶ月で決めたが、官僚に任せるとこうした決定には、何年もかかってしまうものである。それでも、市場参加者の中には、まだ日本政府の政策立案と導入の能力に疑いを抱くものがいる。
残された2週間で、協議会は、政治家が政策を立案できることを証明しなければならない。