「加藤の乱」それぞれの10年
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「加藤の乱」それぞれの10年
政治部
12月2日夜、東京・赤坂。4人の自民党政治家が、あの時と同じカクテルが注がれたグラスを傾けていた。
臨時国会での民主党政権の混迷ぶりを肴に、「いよいよ我々が起つ時だ」といった気勢も上がった。
通称「マティーニの会」に集まったのは、石原伸晃幹事長、岸田文雄・元消費者相、塩崎恭久・元官房長官、根本匠・元首相補佐官。4人は10年前の2000年11月20日、加藤紘一・元幹事長が演じた「広く長いドラマ」の渦中にいた。
野党が提出した森内閣不信任決議案に、加藤氏と山崎拓・元政調会長が同調しようとした「加藤の乱」。当時加藤派の若手だった4人は、決戦の衆院本会議を前に、石原氏の事務所に集まった。
「野党の不信任案に乗るのは理屈が立たない」「森内閣がこのまま続けば、国が壊れる」
大激論の末、賛成票を投じることになった。党からの除名処分も覚悟し、石原氏の作るドライマティーニで「固めの杯」を交わした。だが、多数派工作に敗れた加藤氏は、直後に決議案への賛成方針を撤回、ドラマの幕はあっけなく降りた。
昨年9月の衆院選で落選し、現在は浪人中の根本氏に当時の思い出を尋ねると、悔しそうに、「今も残念で仕方がない」と語った。
「今ごろ大連立だ、『小沢外し』だ、と騒いでいるが、我々があの時、まとまって離党覚悟で賛成票を投じていれば、とっくに政策を軸にした政界再編は完了していた」
節目の「マティーニの会」では、再編をにらんで安全保障の勉強会を作る、との話題も出たという。この10年、それぞれ閣僚などの重責を担ってきた4人。夢物語として政界再編を語る世代ではなくなった。あの時の加藤氏同様、「覚悟」を問われる時が訪れている。
(2010年12月20日 読売新聞)