根本匠自民党福島第二選挙区支部長に聞く
震災・原発事故に対する国の対応の遅さに、多くの県民は不満を抱いている。そうした中、自民党福島第2選挙区支部長の根本匠氏は、郡山市の防災対策アドバイザーを務め、行政の中に入って対策に取り組んできたほか、国政に対しても幾度となく政策提言を行ってきた。そんな根本氏に、この間の国の対応やいま政治が求められているのはどんなことなのかを聞いた。
――震災以降の活動についてうかがいます。
「震災直後、各市町村長と協議し、どんな対策が必要かを聞き、それを自民党の東日本大震災対策本部・政府に上げたのが最初の活動でした。
その後、郡山市の防災対策アドバイザーに就き、就任当初、提起したのは『これから最も大きな問題になるのは、金融の資金繰りと農産物・観光産業等の風評被害対策になる』ということです。
特に農産物については、米、野菜、酪農、畜産、たばこ、原木シイタケなど、各々の農業分野の代表者や、若手農家と直接話し合い、緊密な連携をとりながら、ありとあらゆる課題に対応し、対策を講じてきました。
観光についても、第一次補正予算の前に、政府系金融機関に、思い切った融資措置を講じるよう要請しました。
例えば、震災対応融資については放射能被害を想定していない。風評被害などが対象となってない。そうした制度面についても国と直接やりとりをし、制度を拡充させました。
被災者の状況を把握するため、地元を徹底的に歩き、現地を一つひとつ調査。取り組むべき施策を、3月から7月にかけては15弾にわたって政策ペーパーを自民党本部・政府に要請し、石原幹事長をはじめ国会議員に働きかけ、国会でも取り上げる等、施策を前に進めました。あまりにも政府の対策が遅いから、私ならこういう対策をやる、と。どんどんぶつけ、それが基になり国も動き出しました。とにかく、震災後から半年はやれることは全部やろうと思い、5月の連休には、フジテレビさん、ニッポン放送さんの風評被害対策の企画を、地元自治体や関係機関に提示し、地元の農産物・特産品等の販売キャンペーンを実現しました。
7月には、私が発起人となり、自民党畜産酪農対策小委員会の代表団を来県させ、存亡の危機に直面している畜産農家の現地調査・意見交換会を行い、直ちに自民党主導の畜産農家対策が衆議院農林水産委員会で決議されました。
また、国と直接議論し、郡山市の大槻町針生地区ののり面復旧事業や、安積町の大黒橋の復旧事業、台風15号による洪水に伴う災害救助法の適用期限の延長など多数の地元の具体的な課題を解決してきました。これは野党とか与党とか、そういうことは関係ありません。政策論をやれば、国は動かざるを得ない。
放射能の問題については、環境省と話をしたところ、環境省の所管ではないと言われました。なぜかと言うと、環境省の所管の法律からは、放射性物質を含むものはすべて除かれているからです。
例えば、廃棄物処理法ですが、これには『放射性物質を含むものは除く』と書かれています。
では、どこが所管かと言うと、原子炉等規正法を所管している文部科学省になる、と。つまりは、法律の隙間があったということです。
それが5月の話で、だったら早く必要なルール・法律をつくるように直接要請しました。同時に、『原発起因災害克服総合戦略』を提案し、自民党の総裁、副総裁、幹事長、政調会長に提案しました。要は、放射能問題に関わる総合対策をつくるということ。提言に加え、議員立法の条文案、をつくり、これでやってくれ、ということも提起しました。
地震・津波に対する復旧・復興策も後手後手、放射能の問題は前例がないから絶対に遅れると思いました。
政府の対応を見ていると、すべて東電の責任として、国は前面に出ていなかった。これはおかしい。対策も遅れる。国には原発政策を進めてきた責任があるし、そもそも原発事故に起因する放射能の問題は、被災者にとっては災害なんです。災害であるなら、被災者を救う、災害復旧は国の責任です。だから、まず、国が対策を行い、東電が負担すべき費用は、後から請求すればいいということも提起してきました」
――「福島県は本当に立ち直れるのか」と感じている人もいます。
「確かに不安はあると思います。その要因として、誤った政治主導、官僚を使いきっていない、対策が遅すぎるのは政治家の責任です。政治家が官僚を動かす政治のリーダーシップ、能力が問われています。福島県の復興は今年が勝負。施策対策をスピードアップすることが復興のカギになります」
――中間貯蔵施設の問題についてはどのように考えますか。
「これについては、地元の皆さんの気持ちもあり、辛い、難しい問題ですが、政治が責任を持って決断するしかないと思います。また、住民の皆さんの意向を尊重しながら、長期間住めない地域は、国が責任を持って買い上げるということも必要です。ただ、中には借り上げを希望する人もいるでしょうから、それは柔軟に対応すべきです」
――菅内閣、野田内閣の震災対応についてはどう評価しますか。
「菅内閣の対応は最悪でしょう。
菅総理は官邸の中に20もの対策本部をつくりましたが、これでは船頭多くして船山に登る。これは危機管理対策で最もやってはいけないことです。
有事の際はスピーディーに対応できるよう、簡素かつ効率的な組織にしなければなりません。
もっとも、私の立場でそう言ったらただの批判と思われるかもしれませんが、危機管理のプロである佐々淳行氏も自身の著書でそう書いていますし、私もそう思います。
野田総理については、一言で言うと施策に魂が入っていない。
例えば復興交付金。これは、被災自治体の復興支援のための交付金で、5省にわたる40事業について補助するものですが、放射能対策については不十分だし、各省で縦割りになっているため、使い勝手は良くないと思います」
――佐藤雄平県政については。
「地震・津波の復旧は目に見えて進みますが、放射能の問題はまだ災害が続いている。除染は当然のこととして、子どもの健康のための対策、農業をはじめ産業再生の施策を、必要な予算を、どんどん要求していかなければならない。
しかし、政府が頼りない、陳情しても跳ね返ってこないのが現状です。
今こそ、地域が先導的に取り組んで国を動かすしかありません。
予算についても、こういう対策のための予算が必要だ、と具体的に要求した方がいいと思います。そういう対応を期待します」
――東電の対応についても、県民は大きな不満を抱いています。
「東電の対応を見ていると、組織が隅々まで機能しているのか、という疑問があります。やはり、血の通った対応が必要です。とにかく、賠償の対応が遅い。もっとスピーディーに対応してもらいたい」
――警戒区域の見直しが検討されています。
「まずは希望の持てる『地域再生工程表』をつくることが先決です。長期間帰れない方には、コミュニティの維持に配慮しながら、警戒区域外に生活や雇用の拠点を計画的に用意する。そういう将来像を提示することが大事です。
一方で、中間貯蔵施設の場所も一体的に決めていく必要があります」
――最後に。
「原発事故でイメージダウンした福島を、いい意味で『世界のフクシマ』にしなければなりません。
例えば、世界に打って出る農業や、最先端の産業を集積するなど。将来的には、『東北復興未来博覧会』と銘打って復興をアピールしたい。
当然、第2首都は福島です。福島の未来を担う子どもたちに、安全で安心な魅力ある福島を創りあげていくことは、われわれの最大の使命、責任です。
県民の皆さんとともに、絆を深め、ともに助け合い、心を一つにし、『ふるさと復活』のために、福島県から国を動かすという気迫と気概を持ってがんばります」