原発事故対策法要綱を提示、二重ローン対応等を的確に
東日本大震災後、郡山市防災対策アドバイザーとして復旧・復興へ向けて積極的な提案活動や法案作りなどと取り組んでいますが。
根本 大震災直後から政府の取るべき対策を幾つも提案してきました。福島県にとって一番大事な点は、放射能物質の拡散にともなう風評被害です。避難しなさいといわれた原発から20キロ、30キロに位置する計画的避難監視区域などの外側でも、幅広く風評被害が出ています。たとえば、原発被害ではグレーゾーンにあたる福島の「中通り」ですが、土地取引がぴたっと止まり、新築住宅の着工を見合わせるといった現象が見られました。風評被害というのは通常、農産物、加工食品、観光の3つの業種に色濃く現れるものですが、福島では工業製品まで幅広く風評被害にあっています。例えば、リース業をやっている人の中古の機械が、放射性物質を心配する顧客からキャンセルされたといったことが頻発しました。
政府は福島県全域のホウレンソウの出荷停止に踏み切りましたが、これでは福島県全域が放射能物質に汚染されていると思われても仕方がありません。もっと科学的、合理的な絞り込みが必要で、これでは政府自らが風評被害の引き金を引いているのではないかと疑われます。現在の民主党政権には原発起因災害である放射能被害に伴う対策をなに一つ打ち出せないのです。政策の本質を見極める能力、政策を作る力、総合調整能力が全くないといっても過言ではありません。福島では、校庭の表土を除去するという放射性物質対策を行いましたが、こうした費用を文部科学省・政府は出しませんでした。これは原発事故に伴う災害であって、地震災害、津波災害と同じはずですから国が出費すべきものです。このまま総合対策をつくらないと後手後手に回って、福島県は生活も経済も脅かされてしまいます。そこで、私は経済の縮小スパイラルになるという認識で原発起因災害克服総合戦略の立法化を考えました。
具体的な内容を教えてください。
根本 やるべき政策は何かということですが、地震・津波と同じく原発に起因する2次災害=放射性災害については災害″として捉える。そして、その対策には特別な枠組が必要で、これは国の責任でやるべきだということです。それでは何をやるかということになりますが、一つは放射線量を詳細にモニタリングするということです。さらに、それに基づいて、必要な除染をし、放射線量を低減させる。二つ目は子供を守るということです。医療関係者が放射線量を観測するため常に着けているバッジを子供達一人ひとりにつける。内部被爆も心配になりますから、定期的に線量を測ってもらう。放射能の影響があるかないかということよりも、安心してもらうということが大切になります。三つ目は、風評被害は幅広く産業に及んでいますから、産業別・風評被害の対策を行うべきだということです。四つ目は放射線量の影響に関しての科学的な基準、五つ目には原子力被害に伴う補償をきちんとすること、原発災害交付金のような性格の予算を設けて、被災自治体がその判断で使える資金があると良いとも考えています。
その他にもいろいろあるのですが、これだけでは単なる提案に終わってしまって、実行が危ぶまれます。そこで「特定原子力事故災害対策推進法要綱」をまとめて、自民党に提出したわけです。
仮設住宅や中小企業の二重ローン問題でもご意見があると聞いていますが。
根本 東北地域は、一次産業・高齢化・過疎化の地域で、もう一度住宅ローンを組んで住宅を建てるのは大変なことであるのは確かでしょう。そこで、仮設住宅を払い下げ予定仮設住宅として、自治体が恒久住宅を建設し、入居者はある程度の賃料を払うが、その賃料はローンの返済資金に充てる。10年間ぐらい過ぎた時点で、残存価格で自治体が入居者に払い下げるような方式ですと、無理なく住宅が持てることになると思います。
中小企業の二重ローン問題ですが、福島の原発関連の警戒区域内には7千社、2万人の雇用があります。被災地の中小企業にいままでと同じ不良債権スキームを使って解決しようというのは大変に困難だと考えます。例えば、一定期間無利子とか、金利据え置きとか言っても、私が金融再生問題と取り組んだ経験からいえば厳しいと思います。そこで、暫くは返済の義務の要らない資本を調達できる仕組みを考える必要があります。
そこで私が提案しているのが地域復興国策ファンドを創設して、中小企業に資本を注入し、20年ぐらいが経過した時点で経営者が株式を購入するという考えです。仮に東日本大震災の被災地の中小企業1万社程度に、1社1千万円程度の資本金を投入しても1千億円です。「雇用なくして復興なし」ですから、1千億円程度のファンド基金は社会インフラ、社会的共通資本と考えれば、そこに国家的な投資を行っても問題はないはずです。とにかく被災地の中小企業の自立する力を引き出すのが大事です。ここで常に問題になるのが、どんな企業に資本を注入するかということですが、地域の信用金庫、地方銀行に資本注入先の中小企業の目利きをお願いすると、金融機関対策にもなると考えられます。経済の活性化が大事なことであるのは間違いありません。