衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 住宅産業新聞
2007.10.31

循環型社会の強みを生かせ

住生活基本法の施行などを背景に住宅政策に新たな地平が拓かれようとしています。農業政策にもお詳しい立場で日本列島の有効活用、二地域居住の可能性などについてお話し願います。

根本 私は内閣総理大臣補佐官として5月に「アジア・ゲートウェイ構想」をまとめました。その中での問題意識の一つとして、日本が人口減少社会に入ってきたという視点があります。そうなると、これまで国内の需要に依存していた産業が縮小してきます。例えば、農業も人口が減少すると、将来、市場が縮小するということになります。

現在、日本の貿易量(輸出先)の約5割はアジアであり、アメリカは2割強です。アジアと日本の結びつきはとても強くなっています。私が1990年代半ば以降に危機感を感じていたのは、日本の産業が空洞化して地方の工場が閉鎖される現象でした。そこで、考えたのが「科学技術振興立国」でした。その後、知的財産立国へという流れもありました。ここの分野では競争力を取り戻してきています。

今、景気が回復したといわれているのは、製造業が競争力を取り戻し、生産拠点の国内回帰が始まっているからです。同時に日本は部材産業が強みであり、アジアと生産工程を水平分業し、日本は部材輸出してアジアで完成品を造るという大きな流れができています。アジアの発展により中国の湾岸部を中心に富裕層が出てきています。その結果、高くても品質の良い物は買うという消費者が増えてきた。

そして、冷凍技術の発達やIT化の進展によって、農産物を輸出できる条件が整ってきている。リンゴは有名ですし、米も中国に輸出し始めています。日本の農産物に輸出の可能性が出てきています。日本の農業は販売力、経営力を付けることでベンチャービジネスとして成り立つということです。

今、農業政策を産業政策として考えると同時に、日本には豊かな自然や田園が残っているので地域政策としての農村政策を考える必要がある。産業としての農業政策は儲かる農業を目指す。キーワードは「安全・安心・高品質」です。そして、地域政策としての農村政策を考えると、「二地域居住」も出てきますし、「都市と農村の交流・対流」も出てきます。

昔からの農村には、神社があったり棚田があったり、地域資源の宝庫です。地域の文化もあり、そうした地域資源の活用により観光客が来たり、団塊の世代が定年後に移り住む。そうなれば、農村地域も新たな活性化の可能性が出てきますし、豊かな自然の中の住環境も生きてきます。

バイオ燃料の生産政策とミックスさせるという提案もありますが…。

根本 バイオエタノールが注目されるようになってきましたが、バイオ燃料にするという前提で多収米を作り、それがバイオ燃料として売れるようになれば、農業の産業政策としても有効であり、一石二鳥となります。バイオ燃料の可能性は大きいと思います。減反したところに原料になる作物を作り収入を得るという道が出てくるはずです。

日本経済の現状は、グローバル化にどう対応するかが大きな命題です。グローバル化とは国際的な大競争を意味しています。私が「アジア・ゲートウェイ構想」で示したのは、そのことであり、強みを見い出し育て上げて競争に耐えられる産業とする。すべての産業についていえることであり、農業もそうです。日本にはバイオ燃料などについての技術力はあります。新しい視点からの競争力強化も必要です。若い世代が農業に魅力を見いだす状況になれば、日本の国土利用面などでも新たな視界が開けてきます。

「循環型社会」という議論が出てきました。

根本 日本は元々、循環型社会先進国です。農業は典型ですが、農耕民族社会は循環型社会そのものですね。高度成長を経て大量生産、大量消費社会になって利便性を追求してきた。その間、公害問題などの成長に伴う負の部分を克服してきた歴史があります。今、地球環境問題が大テーマとなり「200年住宅」も地球環境問題という大きな視野を捉えて、循環型社会の一環として登場してきました。

フロー型社会からストック型社会へとか、長持ちする住宅などという200年住宅のコンセプトは、まさに時代の要請といえます。水源の涵養など、農業の多面的な機能と関連する考え方もビルトインされていますね。

200年住宅は、住宅を社会的資産として位置づけよう、地球温暖化対策を家庭から捉えようとするなど々、まさに住宅を公共財的に捉えて打ち出した構想ですね。住宅を単体として見る視点から、大きく社会的に捉えようとする動きです。福田総理が直前まで党の住宅土地調査会長だったこともあり、その動きは速くなると思います。

住宅政策では税制のウエートが重要ですが…。

根本 総裁選の演説会で印象的だったのは福田さんが「ストック型社会」ということを強調されて、「200年住宅」にふれたことでした。所信表明演説でも同様な文脈で「持続可能社会」ということを強調されていました。これらは総理ご自身の発想、考え方だと思いますね。そのような新たな考え方に対応した政策展開が大事であり、福田さんが総理になられたことで環境は整っている状況であり、住宅税制もいい方向に向いてくると思います。