衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 経済Trend 3月号
2007.03.01

アジアとともに成長する「美しい日本」を目指す

内閣総理大臣補佐官 根本 匠


世界の人々が憧れと尊敬を抱き、子どもたちの世代が自信と誇りを持てる国。我が国が、そうした「美しい国」として21世紀も繁栄を続けていくためには、持続的な経済成長が不可欠である。人口減少社会を迎えた我が国としては、安倍総理が掲げるとおり、イノベーションの力とオープンな姿勢によって、日本経済に新たな活力を取り入れることが鍵になる。総理補佐官として、この安倍内閣の成長戦略を支えるべく、「アジア・ゲートウェイ構想」を柱として、実効性のある政策の実現に全力で取り組んでいく。

アジアの中の日本

アジアと世界の結節点となって、アジアや世界の人、モノ、カネ、文化、情報が集まってくるような、開放的で魅力的な、磁力のある国。それが、ゲートウェイ構想で描く理想の国家像である。

日本経済は、アジアの地域秩序の中に徐々に埋め込まれ、今では、「アジアの中の日本」とでも形容すべき関係が生まれている。アジアは「世界の成長センター」として更なる飛躍が見込まれる地域でもある。我が国経済の将来は、今やアジアなくして考えられない。

しかも、日本に関心を持ち、魅力を感じ、日本を訪れたい、日本で学び、働きたいと考える人々がアジアには沢山いる。そういう人々を大切にし、我々との相互理解・相互信頼の関係を深めていくことは、外交的にも大きな意義を持つ。

「第三の開国」はアジアと世界の両面に

アジアの活力を取り込んで行くためには、アジアに向かって日本を開くことが求められる。言い方を変えれば、アジア・ゲートウェイ構想は、「第三の開国」戦略だ。

世界の大きな変化に対応してオープンな改革が求められる今の状況を、明治維新、戦後に次ぐ「第三の開国」と見立てる議論は、暫く前からある。しかし、真の「開国」はこれからだ。グローバル経済のメリットを、一部のものづくり産業に止まることなく、日本の隅々に行き渡らせるよう、ゲートウェイ構想で社会全体のオープン化を進めていく。

「第三の開国」においては、これまで以上にアジアが重要になる。しかし、それは、アジア一辺倒ということでは決してない。我が国と普遍的な価値観を共有する相手であれば、アジアにも、米欧をはじめとする世界にも、双方に開かれた国づくりを目指す。ゲートウェイとは、何かと何かを結びつけるものであって、片方だけでは意味をなさない。米欧との緊密な連携を維持しつつ、アジアの一員としてリーダーシップを発揮することが、日本の存在をこれまで以上に大きくするだろう。

ゲートウェイ構想の重点七分野

総理が議長、私が議長代理を務める「アジア・ゲートウェイ戦略会議」では、昨年十二月に、重点七分野を決定した。現在、五月の取りまとめに向けて、具体策の検討を急いでいる。

人流・物流ビッグバン

 〜 利用者の視点に立った航空・港湾・物流改革

国際人材受入・育成戦略

 〜 世界で活躍できる人材の育成、海外人材受入・育成の戦略的推進

日本・アジアの金融資本市場機能強化

 〜 日本の国際金融センター化、アジアの金融資本市場の育成

「国内市場型」産業の競争力強化

 〜 グローバル化等に対応した「攻め」の農業・サービス業改革

アジアの活力を取り込む地域戦略

 〜 地域とアジアが直接繋がり、魅力と活力ある地域を創る

日本の魅力の向上・発信

 〜 知的創造力に富んだ「クリエイティブ・ジャパン」を創り、世界に発信

アジアの共通発展基盤の整備

 〜 世界の成長を支える「開かれたアジア」の維持・発展

紙幅の都合上、項目を絞って、基本的考え方を説明しよう。

人流・物流ビッグバン

ゲートウェイ構想の実現のためには、企業と企業の繋がりはもとより、人と人の繋がり、地域と地域の繋がりを、アジアと日本の間にできるだけ多く創ることが大切だ。そのためには、まず、人やモノの往来をできるだけ容易にし、拡大していく必要がある。ゲートウェイ構想の第一の柱は、航空・港湾や貿易関連手続の大改革、「人流・物流ビッグバン」である。

より多くの国民が、もっと気軽で簡単にアジアと行き来できるように、深夜早朝を含めた空港のフル活用や、アジアとの航空ネットワークの強化、ビジネスニーズが強い羽田の国際化などを進める。通関などの諸手続きを簡素化・効率化し、ソフト面から港の「使い勝手」を改善していくことも、ものづくり立国の我が国としては死活的な問題である。こうした重要課題について議論するための官民検討会も立ち上げた。利用者の視点に立って、官邸主導で果敢に改革を進めていく。

国際人材受入・育成戦略

「国家は人なり」と言うが、アジアの発展もまさに人材にかかっている。我が国には、アジアからの留学生を迎え入れ、育ててきた長い歴史がある。彼らの多くは、日本での経験を活かし、母国に戻って様々な分野で活躍し、その国の発展、アジアの発展に貢献してきた。アジアの人材を迎え入れ、育て、アジアに還流すること。そのような高度人材育成ネットワークの中核機能を担っていく。

優秀な海外人材の受け入れは、我が国の成長戦略にとっても重要だ。イノベーションを起こすには、多様な人材が異なる考え方をぶつけ合う環境が欠かせない。大学では、授業を原則英語で行う、学生の半分をアジア人にする、海外の大学との共同プログラムを設置する、といった国際性を重視した取組みも徐々に増え始めている。このような大学・大学院の国際化は、世界で活躍する日本人を育てるうえでも欠かせない。企業でも、グローバルな人材マネジメントが重要な経営課題として認識されはじめた。こうした動きを強力に後押しし、アジアや世界の人々が日本で学びたい、働きたいと思うような社会を、産学官一体で構築する。

省庁の垣根を越えて機動力・実行力を発揮

この他、文化力を高めソフトパワーとして活かすための「日本文化産業戦略」の策定や、地域のアジア戦略の支援など、重要課題は数多いのだが、その説明は別の機会に譲りたい。

いずれにしても、これだけの課題について、政策をとりまとめていくことは、容易なことではない。しかし、世界の動きは速く、改革は待ったなしだ。従来の各省庁体制の限界を乗り越えて、総理補佐官制度がどこまで機能し、機動力と実行力を発揮できるか、是非期待をして頂きたい。その期待に、全力で応えていく決意である。

以上