衆議院議員 福島2区(郡山市、二本松市、本宮市、大玉村
掲載 : 住宅産業新聞
2002.04.03

公庫改革は金融構造変革へ

公庫の”廃止”で、国の住宅政策は変わるのか。

根本 私は特殊法人問題を考える時に政策論と行革論、組織論の三段論法で考える必要があると主張してきた。それは、特殊法人が担っている政策がどういうことなのか、必要な政策なのかという政策論を議論し、行革の視点で切り込む。その上で政策として必要となれば組織論を問う。こういう議論をすべきだと言ってきた。

特殊法人には組織を維持しよう、新たな仕事を作ろうという肥大化メカニズムがある。特殊法人改革は、この肥大化メカニズムを断ち切ることだ。公庫が行ってきた政策は何か、一つは長期・固定・低利で融資する。これは国民にとっては返済計画が確実で将来設計ができる。それから、バリアフリーや省エネといった質の向上も図れる。住宅取得に対する安全・安心のため、住宅取得という夢の実現のために使われてきた。公庫の役割を転換するに際して、大事な点はこの公庫の担ってきた役割をキチンと政策として担保できるかどうかと言うことだ。

金融が大きく変わる

アメリカでは民間金融機関がベースで、それを国が補完、証券化するなどして、ジニー・メイなどの官が補完するスタイルを取っている。今回の公庫改革では、基本的には民間の住宅金融をベースに、国民の住宅取得を達成するために、官は基本的に証券化支援という形にしようという方向性になった。

――アメリカ型の金融システムに変えると。

根本 ダイナミックに考えるなら、公庫は廃止だけれども新たな役割として証券化支援業務を柱にする。公庫に代わる組織として支援業務を柱とした組織が五年後にでき、証券化支援業務が大きな柱になる

住宅政策を離れ金融構造改革という視点に立つと、今回の公庫の改革はどういう意味を持つかというと、MBS(不動産担保証券)市場が立ち上がっていくことになる。アメリカのMBS発行高は日本の二千二百倍に相当する三百二十二兆円で、住宅ローン残高の四五%を占めている。これに対し日本はたかだか二千億円弱だ。MBS市場が大きく立ち上がっていけば、金融商品として預金金利より高い金利の商品ができる。国民の金融資産の選択肢として、そちらに資金が流れていく。

住宅関連では「環境にやさしい住宅の日本型モデルの発信」が盛り込まれています。住宅はライフスタイルのあり方に最も大きな影響を与えるものの一つであり、環境にやさしい住宅の日本のモデル、エコハウスを日本発で発信していこうという内容です。

だから、公庫の証券化支援組織への衣替えは日本の金融構造改革、MBS市場の立ち上がりにも資するというダイナミックな政策対応ができる。

大事なのは民間金融機関がキチンと貸してくれるかと言うこと。民間には、長期・固定で三十年の商品が出ていると言っても、地域や期間限定なものだから、少なくとも長期・固定というローンは民間では無理だ。証券化すれば住宅ローン債権を束ねる訳だから、長期・固定・低利の可能性が見えてくる。信用補完を加味すれば、選別融資はなくなる。質の担保については品確法などがある。

――今後の課題は。

根本 新スキームの政策の組み立てを具体的にどう上手に動くスキームに作るかが課題だ。公庫が果たしてきた役割を、今後も果たしていくという検証をしながら、新しいスキームを作っていくことが住宅金融小委員会の仕事になる。MBS市場といっても、アメリカでさえ二十五年以上かかった。住宅取得を応援するという視点に立ち、新たな証券化支援という政策をどう作り上げていくかが課題だ。

住宅ローン債権は安全なものだ。MBS市場は資産担保証券で、上手に行えばダイナミックに日本の金融市場が変わっていく。高齢者の金融資産は増えているが、介護保険が整備され、「将来の不安」がなくなったのだから、もっと消費に回してよい。MBS市場が立ち上がれば、貯金との金利差で、MBS市場が一層拡大する可能性がある。

住宅政策だけの視点から見ると「何で公庫を廃止するんだ」となる。私もそう思っていた。今でも公庫の役割は重要だと思っているが、公庫が果たしてきた住宅政策の役割をキチンと政策的に行えるように料理すれば良いと思う。

――デフレ対策では。

根本 「脱デフレ日本サバイバルプラン」を提唱している。日本のデフレは二つの複合デフレだ。一つは土地と株価が下がるという資産デフレ。もう一つは国際的な大競争の時代に、安いものが外国から入ってくる、発展途上国から追い上げられるという意味のデフレもある。安いものが入って来るということは、産業・企業にとって厳しい国際競争にさらされることになる。だから、資産デフレ対策と同時に、不良債権処理による金融・産業再生も柱の一つにしなければならない。国際競争力を高めることも柱にしなければならない。こういうものをトータル・パッケージでやらなければ駄目と思っている。マクロ、ミクロの政策を総動員しないと、デフレから脱却できない。

デフレ対策で一番効果が大きいのは土地取引と住宅建設、株式市場の活性化だ。その意味で、住宅取得を支援する住宅税制の改革は効果が大きい。今までのコチャコチャやっていた対策では駄目で、思い切った対策を時限的に実施することが必要だ。

――具体的には。

根本 以前から言っているのは生前贈与の特例の拡充だ。ただ、私は三千万円に拡充する必要はなく、一千百万円程度でよいと思っている。贈与税は少しは払って貰った方がよい。私の言いたいことは、一千百万円程度にすることで、上手くいけば国の贈与税収は減らないということだ。三千万円非課税になると、税収そのものが入らなくなり、金持ち優遇という批判を招く。十三年度に非課税枠が五百五十万円に拡充され、それ以前は三百万円だった。三百万円の時代に親は平均四百万円を贈与し、百万円の部分の税金を支払っていた。贈与税の税収とのバランスも必要だ。

――土地税制では。

根本 登録免許税などを半減しろと提唱している。国税として入ってくる不動産取得税、登録免許税は一兆二千億円ぐらいだ。これを五千億円くらいに減らすと、企業の収益性が高まる。三年間の時限で二分の一に減額すると波及効果を含めGNPは五兆円以上増えると試算している。脱デフレという視点から、この様な手を打つべきだと考えている。土地取引が活発化し、住宅建設も増える。その際、政策の順番や重点を間違えてはいけない。一番効果的な策を最初に実施すべきだ。